家事や育児の合間に働きたいと思って求人サイトを見ると、「アルバイト」と「パート」の募集にわかれていることに気づくと思います。
しかしこの2つ、仕組みや働く形態は同じように見えるのに、別の表記になっているのはなぜでしょうか。
今回はこの「アルバイト」と「パート」という2つの働き方について、違いや働く際の待遇、働く上で知っておきたいメリットまでご紹介します!
アルバイトとパートは別のもの?
「アルバイト」と「パート」という2つの働き方は、実は法律上は差がありません。
パートタイム・有期雇用労働法によれば、法律上の扱いはどちらも「パートタイム労働者」に区分されるとなっています。
「パートタイム労働者」の定義は「正社員(通常の労働者)と比較して1週間の所定労働時間が短い労働者」です。
この条件を満たしている場合、職場で「アルバイト」または「パート」のどちらかで呼ばれていたとしても、法律上は「パートタイム労働者」となります。
参照:厚生労働省『パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために』
アルバイトとは何?語源は?
アルバイトは「労働」を意味するドイツ語の「arbeit」を語源とする言葉です。
このような単語が生まれたのは、明治時代の学生が外国語としてドイツ語を学ぶことが多く、自分たちが学業の合間に行う労働を「arbeit」と呼んでいたのがきっかけといわれています。
当時の学生たちは日常生活にもドイツ語を織り交ぜて会話していたそうで、そこからアルバイトという言葉が誕生したようです。
このような語源を持つこともあり、アルバイトという言葉のイメージは学生との結びつきが強く、学生や若いフリーターの働き方として認識されているケースがほとんどとなっています。
パートとは何?語源は?
パートの語源は英語の「part-timer(パートタイマー)」といわれいてます。
「part-timer」は「full-time」の対義語であり、それぞれ「短時間の労働」と「常勤」を意味しています。
所定労働時間のすべてで働く(=フルタイム労働に従事する)正社員に対して、その中の一部の時間で働く人をパートタイマーと呼ぶのです。
そのため、正社員としてのフルタイム労働ができない主婦や主夫が、家事の合間などで短時間の労働を行う際によく用いられる言葉となっています。
主婦が働く時の呼び方はアルバイト?パート?
主婦が非正規雇用として働く際は、一般的には「アルバイト」ではなく「パート」と呼ばれるケースがほとんどです。
先ほど説明した通り、「アルバイト」は学生を中心とした若者世代の働き方というイメージが浸透しています。
一方で「パート」は主婦や主夫といった、フルタイム労働の時間が取れない人の働き方であるという認識が一般的です。
そのため主婦が働く際の呼び方は、大抵の場合は「パート」となります。
ただし前提として、「アルバイト」も「パート」も、どちらも法律上は「パートタイム労働者」という枠組みである点は変わらないということに注意しておきましょう。
「パートタイム労働者」とは?
「アルバイト」も「パート」も法律上の差はなく、どちらも「パートタイム労働者」です。
ではその「パートタイム労働者」とはどのような枠組みなのでしょうか。
パートタイム労働者の定義は?
先ほども紹介しましたが、パートタイム労働者の定義は「正社員(通常の労働者)と比較して1週間の所定労働時間が短い労働者」です。
この定義は、世間一般でアルバイトやパートと呼ばれる働き方以外にも、多くの働き方が当てはまります。
例えば世の中には、定年後の再雇用や特殊な専門業務のために契約を結ぶ「嘱託」、期間の定めがある雇用契約を結ぶ「契約社員」、他にも通常とは異なる契約を結んで働く「臨時社員」や「準社員」といった働き方があります。
これらはすべて、正社員と比較すると1週間あたりの所定労働時間が短い労働者です。
そのため、上記の働き方は名前こそ違うものの、いずれも法律上は「パートタイム労働者」として扱われるのです。
参照:厚生労働省『パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために』
パートタイム労働者も権利を持っている
パートタイム労働者は「パートタイム・有期雇用労働法」によって、働きや待遇に見合った公正な待遇を受ける権利を保持しています。
パートタイム労働者の労働時間は正社員よりも短いですが、職務の内容や人材の配置などをきちんと考慮したうえで、不合理な待遇や差別的な扱いをしてはならないと定められています。
パートタイム労働者が受けられる待遇は?
パートタイム労働者は、労働時間が短くともきちんとした待遇を受けられる権利を持っています。
具体的にどのような待遇を受けられるのか、一つずつ解説します。
有休
労働基準法によれば、条件を満たせばパートタイム労働者でも年次有給休暇を付与してもらえます。
有給休暇を付与してもらう条件は
1.在籍期間が半年に達している
2.労働契約書などで締結した労働日の8割以上出勤している
の2つを満たしていることです。
条件さえ満たしていれば正社員でなくとも有給休暇を利用できるので、忘れないうちにパート先に確認しておきましょう。
参照:厚生労働省『年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。』
育休・産休
有給休暇と同様に、パートタイム労働者も育児休暇や産前産後休業を与えられます。
産休には出産前の「産前休業」と出産後の「産後休業」の2つがあり、自身が出産を行う場合なら無条件で取得できます。
産休の期間は以下のとおりです。
・産前休業:出産予定日の6週間前から(双子の場合は14週間前から)
・産後休業:出産翌日から8週間
ちなみに産前休業は開始時期を任意に設定できますが、産後休業は「出産翌日から8週間の就業を禁止する」という内容です。
早めに職場に復帰したい場合は、医師の就業許可を得たうえで産後6週間を過ぎている必要があります。
一方で育休は、指定の条件を満たした場合に男女どちらも取得できます。
育休を取得できる条件と取得できる期間は以下のとおりです。
・取得条件:子が1歳6か月(2歳までの育児休業の場合は2歳)に達するまでに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと
・期間:子が1歳になるまで(保育所に入れないなどの理由で1歳半・2歳になるまでの二回の延長が可能)
これらは雇用形態を問わない労働者の権利なので、出産の予定がある場合は必ず確認しておきましょう。
参照:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』
社会保険
パートタイム労働者でも、一定の勤務条件を満たすと雇用先の社会保険の加入対象になります。
この社会保険の適用範囲は2024年10月に拡大されており、厚生年金保険に入っている従業員が51人以上在籍している企業がすべて対象となっています。
そのような企業に勤めている場合は、以下の4つの条件をすべて満たした場合に社会保険の加入義務が発生します。
・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
・所定内賃金が月額8.8万円以上
・2ヶ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない
参照:厚生労働省『社会保険適用拡大対象となる事業所・従業員について』
扶養控除
パートタイム労働者でも、年収が一定額以下の場合は親や配偶者の扶養に入ります。その場合、各種扶養控除や配偶者控除の恩恵を受けられます。
特に主婦の場合は、パートで得られる年収が150万以下の場合に配偶者特別控除を受けられます。
ただし、配偶者特別控除を受ける場合は、自身がパートで稼ぐ収入だけでなく、配偶者の年収も控除額に影響を及ぼす点に注意しておきましょう。
参照:NHKニュース「103万の壁って?106万、130万も…違いは?年収の壁を詳しく」
残業手当
パートタイム労働者も労働基準法に基づき残業手当を受け取れます。
労働基準法では「一週40時間、一日8時間を超えて労働させてはならない」と定められており、労働時間がこの基準を超過した場合は、割増賃金での支払いが義務付けられています。
ただし、これは労働契約や就業規則で残業手当に言及されていない場合で、職場ごとにルールが定められていることが多いです。
残業で働いた分の賃金を受け取る権利はどの労働者にもありますが、どのような形での計算になるかを事前に確認しておくと、不測の事態やトラブルを避けやすくなりますよ。
参照:連合奈良『Q:1日6時間勤務のパートタイムで働いています。いつも30分くらいの残業が続いていますが残業代はもらえるのでしょうか。』
その他
交通費や社割といった福利厚生についても、パートタイム労働者は正社員ではないからという理由で対象外となるわけではありません。
ただし、住宅手当や資格取得用の研修支援などについては、合理的な理由に則って正社員のみが利用できるケースもあります。
これらの福利厚生は法律ではなく会社ごとの就業規則によって定められており、勤めている企業の就業規則によって変わってくるのでよく確認しておきましょう。
パートタイム労働者になるメリット3選
パートタイム労働者になるメリットは大きく3つあります。
・いつどのように働くのか自分で決められる
・未経験の職種でも気軽に挑戦できる
・求人情報が多いので希望の職種を狙いやすい
順番に詳しくご紹介します。
いつどのように働くのか自分で決められる
パートタイム労働者はシフト制で働くケースが大半のため、働く時間帯や曜日については自分で決められます。
そのため、「子供たちが学校に行った後の昼間に働いて、夕方には帰っておきたい」といった希望を持つ主婦の方でも、その希望に合致したスケジュールで働きやすいです。
子育てや家事との両立を目指す主婦には、前もって予定を決めておけるシフト制がぴったりといえるでしょう。
また、シフト制の場合、月または週ごとにシフトを申請する形式である場合が多いので、子供の学校行事などがあっても柔軟な対応が可能になります。
未経験の職種でも気軽に挑戦できる
パートタイム労働者は重要な役割を任されるケースが少ない分、スキルや経験にかかわらず雇ってもらえる傾向にあるので、未経験の仕事にも挑戦しやすいというメリットがあります。
正社員として未経験の業種に就こうとすると、何らかのスキルまたは経験を要求される場合がほとんどでしょう。しかしパートタイム労働者なら、正社員に求められる水準に達していなくとも採用してもらえる可能性があります。
また、職場によっては、スキル向上や資格の取得を支援してくれるようなケースもあります。未経験だけど憧れの職種があるという人は、パートタイム労働者として応募することを検討してみる価値がありますよ。
求人情報が多いので希望の職種を狙いやすい
パートタイム労働者の募集は、正社員の募集と同等かそれ以上の数があります。
そのため、自分がやってみたい仕事を見つけやすく、その上、職種だけでなく勤務条件や勤務地も豊富にある中から選べます。
職種や条件にこだわりたい場合は、選択肢の豊富さは心強い要素です。
また、正社員と比較した場合、先述したようにパートタイム労働者の方が雇ってもらえるハードルが低いのも、自分が希望している職種に就きやすい理由の一つといえます。
まとめ
今回は主婦の働き方として、パートタイム労働について解説しました。
一般的に主婦が非正規雇用で働く場合はアルバイトではなくパートと呼ばれますが、この2つは法律上「パートタイム労働者」と呼ばれる働き方となります。
パートタイム労働者は正社員と比べて所定労働時間こそ短いですが、正社員と同等の労働に関する権利を有しています。
どんな待遇を受けられるのか、どんなメリットがあるのかをしっかり理解しておくと、パートタイム労働者の仕組みをうまく活用することができますよ。
家事や育児の合間に働きたいという主婦の方は、ぜひこの記事を参考にして、自分に合った働き方を検討してみてください。